隠された贈り物
 
 
 
第五夜:城下探索終了
 
 武器屋を後にした3人はそれぞれに購入したものを確認するよ
うにそれぞれ持っていた袋を開いたりしていたが、ふとケルトは
神巫が店を出るまで持っていなかった茶色い紙のようなものでで
きた袋を持っていることに気がついた。
「神巫さん、その袋どうしたの?」
 神巫の腕にしっかりと抱えられた袋を指差し尋ねた。
「ん? これか? これは先ほどの店で店主殿のご好意でいただい
た香炉と香木、それにこの刀の手入れ用の道具だ」
 ケルトの問いに神巫はすぐにそう答えると中を見たそうに見上
げてくるケルトに内心小さく苦笑して、でもそれを表には出さず
「見るか?」と尋ねればけるとはすぐに好奇心をいっぱいに輝かせ
た表情で頷いてきたので袋に手を入れると香炉を取りだしてケル
トの手の中に置いた。
「これが『香炉』。香木をこの中に入れて焚くのだ。『香木』はこ
れだな。おそらく櫻だと思うのだが……、これをこの香炉の中に
入れて焚くと香りがする。」
 ケルトの鼻先に香りのする木を近づけてそう説明すると、彼は
その香木の香りを嗅ごうと鼻をひくつかせた。ボリスもケルト同
様に興味があったのだろう同じように少し鼻を近づけて香りを嗅
いでいるようだった。
 神巫はその2人の反応に見えないように今度こそ本当に苦笑し
たが、それは完すぐに全に隠した状態にしてもうひとつの手入れ
用の道具はどう説明しようかとも思ったが、結構大きいものなの
で今はしないことにしようとける論付けた。
「香り、しないね」
「火で熱することで香りがするんだ。このままでは香りはしない。
 熱せずに香りがするのは白檀だな」
 ケルトの素直な感想にそう説明すると、2人は「そうなんだ」と
納得したように顔を離したのだった。
 そうやって袋から出していた香木を戻すと、ケルトの手の中に
合った香炉を受け取り同様に袋にしまった。その際何かが手にあ
たりわずかに柳眉を寄せそれを取りだしてみると、それは漆黒に
塗られた木の板が何十にも重ねられたものでそれを見ると片手で
ぱっと開くとそれは漆黒に塗られた木の板に深い紺の下色に鮮や
かな桜の模様の描かれた布が張られた、俗に言う扇子だった。
「何ですか? それ。綺麗な模様ですね」
 神巫が開くさまをまじまじと見ていたボリスはそれを見て興味
深そうに尋ねてきた。
「ああ、これは扇子だな。このようなものまで入れられていたの
か」
 呆然とした様子で小さくそう答えると持った手でひらひらと舞
うようにくるりと回してみると、ふわりとかすかな香りがして、
この扇子の木の部分は白檀でできているらしいということがわ
かった。白檀自体かなり高価なものなので、この布地や入った模
様の精密さからして相当高級なものであるということは素人目に
もわかった。
「そういえばさ、神巫さん。服と武器、合ってないねー」
 扇子をまじまじと見ているとケルトが何を思ったのかいきなり
そういってきて彼は少し困ったように首をかしげると「そうか?」尋
ねた。
「うん。だからさ、服買いに行こうよ。朝神巫さんが言ってた通り
にさ」
 うきうきしたようにそういってくるケルトに扇子を閉じてしま
いながら「そんなことを言っただろうか?」と今朝のことを思い返し
てみるが、言った覚えがない。まぁ、確かに似合わないからどう
にかしようとは思っていたが……口にはしていなかったはずだ。
 だがそれを言ってがっかりさせることもないし、服も買ってお
くに越したことはないと思い1つ頷いて答えたのだった。
 何のかんのといいながらも結局は子供に甘いのだろうなと心の
奥でこっそりと自分にあきれる神巫だった。

  
























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