二振りの刀
 
 
 
 神巫は1人刀の系統が並べられている場所へと足を運ぶと、1
つ1つをじっくりと品定めするように眺めながらゆっくりと歩い
ていた。
 刀は殆どが二尺三寸−約70、0cm−〜二尺五寸八分強−約7
8、3cm−ほどのものでほぼ標準といっていいようだった。造り
もよいようで殆どの刀に強い気がこめられていて相当の名匠の手
によって鍛えられたものであると言うことが窺い知れた。
「よい刀だな」
 いくつかの抜き身の刀の刃の部分を見ながらそう小さく呟きな
がら見て歩いていると、どうやら端のほうまで来てしまったらし
く壁に突き当たったのであそこで足を止めた。
『……………………』
 足を止めたところで何かに声をかけられたような気がして左右
をきょろきょろと見渡していると、壁の少しばかり上の辺りで白
鞘の刀と黒鞘の長刀が飾られていた。その鞘には柄の近くに白い
ほうに赤い真紅の椿の、黒いほうに白い桜の華が描かれていた。
 神巫はその刀に呼ばれたような気がして手を伸ばしてみると、
刀を支える土台が壊れていたのかもしくは留め具のようなものが
外れてしまったのか、カタリと音を立てて二振りとも落ちてきて
しまった。
 それに驚いて両手を伸ばすと軽い衝撃とともに刀が彼の腕のな
かに落ちてきた。あまり衝撃なく受け止めれたことに軽く安堵の
ため息をついた。
 そして改めて腕の中に落ちてきた刀を見ると、白いほうは刃の
造りまではわからないが名刀と呼ぶにふさわしい気をはなってい
る極普通の刃長の刀で、黒いほうは明らかに普通よりも長く長刀
と呼ぶべきというような、それでもこの店の中にあるものの中で
もっとも強い気を持つものだということがわかった。
(そういえば、刀に気なんてあっただろうか?)
 刀を見定める際に思わず気を探ってしまっていたが、よく考え
るとこういうものに気はなかったような気がしてそれに気づくと
視線を天井に向けて首を傾げてしまった。
 だがそれを気にしていると今まで自分が見てきたものについて
かなり説明ができない、というよりももしかしたらこの世界自体
もといた世界の常識に当てはまらないという結論を出して自分を
納得させた。
 そして改めて刀を見ると白い鞘の刀は鞘の長さからしておおよ
そ七尺三寸の標準的な長さだろう、だがどう見ても黒いほうはそ
の倍近い長さがある長刀で扱いやすくはないだろう事は容易にう
かがい知らせた。
 神巫はとりあえずその二振りを目の前の台の上に置くと改めて
見定めるように見つめてみると、鞘と柄の間あたりから白い光の
ようなものが漏れているような気がして少し顔を近づけてみた。
 だが先ほど見えた気がした光はすぐに消えてしまって、最早そ
のもれていたという事実すらも感じさせないように静かだった。
「きゅう?」
 肩から顔を突き出していた兎が神巫の不思議な行動に首をかし
げながら小さく鳴いたので、それに答えるように頭をなでると少
し刀から視線を離して周りを見たが、どうやらまだ店主はきてい
ないようだった。

  
























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