声呼ぶ店
 
 
 
 半ば引きずられるようにして連れて行かれるボリス達を見失わ
ないように少し早足に2人を追っていく神巫だが、それでも
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度見失いかけ、そのたびに気配を探して歩いた。
「神巫さん、大丈夫?」
 流石に何度か離れる気配に不安になったらしく振り向き心配そ
うに声をかけてきたが、神巫はそれに対し人込みを縫うように側
によると、「平気だ。気になさるな。」と声をかけたのだった。
 だがその答えにまだどこか不満気なケルトに眉を寄せて軽く溜
息をついた。元々あまりケルトの側に行こうとしなかった自分に
こそ非があるのだから、気にする必要はないと思うのだが。
 最もそんなことを言ってあっさり承知するような性格でない事
も、重々承知しているのだが。
「ねぇ、ケルト君。この辺って、町のどのあたりなんですか? な
んだか家よりお店が多いですね。」
 このまま話していても押し問答が続くだけで限がないと判断し
たのか、ボリスは急ではあったが2人の会話に割って入るように
話題を別のものにする事にしたらしい。
 ケルトは人が好いからこれにもちゃんと答えてくれるだろうと
踏んだのだろう。
「此処ですか? 此処は商店通りだよ。店や飲食店が中央通の次に
多い場所なんだ。」
 ほぼボリスの予想通りにその話題に乗ってきたケルトにボリス
は内心でそっと安堵の息を吐き、神巫はそのボリスのよみに内心
感心していた。
 流石の2人もケルトに不貞腐れるのは避けことだったらしい。
「中央通と異なって珍しい店も多いな……。…………ん?
 ああ、守護石の店か。」
 ケルトの斜め後ろをゆっくりと歩いていると物珍しげな2つの
幻の声を聞き周囲を見ると、その声の示した店を見つけそう呟い
た。
 目に付いた店に少しばかり惹かれたというか、何かに声を掛け
られたような気がしたのだが、今は飲食店に行く方を優先させる
事にし、気になる店は後でゆっくりと回る事にした。どの道今の
状況でゆっくりと見ることはできないのだから。
「あ、ねぇ、一緒にお昼も食べとこっか。まだ早いけど。」
 中天にかかりかけた太陽を見てケルトがそう尋ねてきた。
 確かに自分はともかく2人はそろそろ空腹を体が訴えてくる頃
だろうと思うと、「それでよいのではないか? 2度店に入るより
は良い。」と答えたのだった。
ケルトはその答えに満足げに頷くと周りを軽く見て『アクティア』
と書かれた店に入って行った。どうやら此処で休むらしい。神巫
もそれに続いて店の中に入るとその中の香りに瞳を細めた。

  
























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