空を重ねる少年
 
 
 
 一方神巫にそういわれたボリスは少し考えた後「そうですね。
そうします。」と納得したように答えた。もしかしたら納得しきれ
ていないのかもしれないが。
 神巫はすぐにボリスの内心を察する事ができた。確かに今の彼
の言い方では相手を記憶喪失だといっているようなものだし、何
より、少々納得できるものでもない。行っている当人がすでに納
得できていないのだから。
「言った側が納得できぬのに、相手に納得せよというのも無理な話
だな。それは仕方あるまいか……。
 ……。城下に戻るか?」
 ボリスの反応を見て自分の非に気づき、呆れ気味に呟くと、立
ち上がりケルトたちのほうを見て尋ねた。
 ケルトもその神巫の言葉に頷いて答えると、合わせるようにボ
リスと同時に立ち上がった。その際まだ自分とボリスが彼のマン
トの上にいることに気付いた。
「あ、……あ゛―――ッ!! 神巫さんのマントの上だった〜〜〜っ。」
「ん? いや、これは貴殿から借りた物故、気になさる必要は……。」
 自分のいる場所に気付いたケルトの声になんでもないように声
は一応掛けたが、どうやら聞こえていなかったらしく、慌ててボ
リスを引っ張って移動してしまったので、そのマントを手にとっ
た。
「では、城下に戻るとしようか。」
 マントは元々身につけていたものではないので腕に掛けるよう
にもつと、そうケルト達に向けていい、城下へと戻る道を歩いて
いった。
「うん。ボリスさんも一緒に行きましょ? 住んでた場所とかわか
らないままなら
()()()に泊ればいいし。」
「え!? ええ。そうさせてもらいます。戻ればいいんですけど…。
 あ、それと、ケルト君、敬語はやめてくださいね。」
 急なケルトの提案にボリスは僅かに途惑ってからそれを受け入
れた。その後すぐにケルトに敬語の事を言ったのは神巫との会話
を聞いてのことも、関係しているのだろう。
 ケルトはボリスが僅かに途惑った理由がわからなかったようだ
が、おそらくは神巫がケルトの身分などを確りと話していたため
だろう。『ケルトの家』という事はイコールとして『この国の城』
という事なのだから。
 だがそれと気付いてなお受け入れたのはおそらくこのケルトの
善意を無碍にしない……いや、できなかったため。と神巫は軽く
予測していた。
(にしてもケルト殿、住んでいた場所を思いだす、ださぬに関わら
ず、帰れぬから泊るしかないと思うぞ。
)
 ボリスの正体を薄々感ずいている神巫は内心深い溜息とともに
そう思った。

  
























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