隠れて旅へ
 
 
 
第一門:隠れて出発…?
 
 2人はローグの部屋を出るとすぐに谷の入り口がなにやら騒が
しいことに気付いた。
「もしかして、谷全体で見送るつもり……?」
「の、ようだな……。」
 やや困惑気味のクリスティーアの言葉にローグは溜息交じりの
呆れた口調で肯定した。その一瞬の沈黙のあと2人分の重い溜息
がその場に重く洩れた。
 その反応から双方共に見送りというものが苦手であるというこ
とが覗えた。
「クリスティーア殿も見送りが苦手か?」
「もってことはあなたもなのね……。
 そうよ。だから村の方も実は真夜中にこっそり抜け出してきた
のよ…………。」
 少しだけ意外そうに尋ねてきたローグにそうげんなりとした様
子で答えた。妙なところで気の合う2人だ。
「ねぇ、ここって抜け道ってないの?」
 騒がしい入り口のほうを見ながら言うクリスティーアは、明ら
かに入り口をとおることを嫌がっていた。
 ローグもあんな大勢に見送られるのはさすがに嫌なので、少し
考えて最も人がいないであろう抜け道を探した。
 そしてこれから行く街に最も近い抜け道を選ぶと、クリス
ティーアにそちらに向かうと促した。
「ここ、いくつ抜け道があるの?」
 ローグに案内されながら歩くクリスティーアはそう周りを見渡
しながら尋ねた。ここに来るまでに見かけただけでも10個以上
の道があった筈だ。
「大体、使われなくなったものも含めて、50ぐらいだったと記憶
している。もっとも実際に使われているのは内8個ほどの筈だ。」
 記憶を探るようにこたえるローグの言葉にクリスティーアは本
気で呆れたような表情をした。
 どう考えても尋常な数じゃない。そう思い飽きれたような表情
をそのままに相手を見ると、ローグも同意権なのか深い溜息をつ
いていた。
 その後は特に会話らしい会話もなく抜け道を黙々と歩いている
と、出口附近で動く人影を見つけた。近づくにつれてその姿を
はっきりと認識出来るようになると、その人物がこの谷の長、リ
オルであるということがわかった。
「リオル殿。」
「ふふ。君ならここを通ると思っていた。」
 始めてあった時とは違う、随分と親しみのこもった口調で話す
彼に、クリスティーアはきょとんとした表情になった。どうやら
これが彼の本来の口調らしい。外見に見合った歳相応のものだと
感じられた。
 ローグは顔に苦笑いを浮かべると肩を竦めてみせた。彼に隠し
事はできないということらしい。
「最初は『哀惜の封地』へ行くんだろう?ならこれを持っていくと
いい。
どんな(・・・)場所(・・)()あれ(・・)、役に立つ。」
 そう言うと彼は様々な色が複雑に溶け合ったような不思議な色
合いの石がはめ込まれたネックレスをローグに手渡した。
「これは。………………ありがとう。感謝する。」
 それを見たローグは一瞬驚いたように目を見開いた後、優しい
笑みを浮かべてそう言った。リオルもまた柔らかく笑った後「幸運
を祈っておる。」と長老らしく一言残して、ローグたちが通ってき
た 道を逆に歩いていった。

  

























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