無自覚
 
 
 
 ケルトと別れて先程見た場所で改めて服を選ぼうと足をむける
と、同時に周りの視線も自分に向かって動いてきたので変な服と
言うわけでもないのに見られていることに首を傾げた。
(もしかしてもなく、先程見られていたのはケルト殿やボリス殿で
なく、私、か?
)
 さして目立つような外見もしていないと思っている分何やら違
和感がある。
 ケルトは王族であり、ここにもよく来ているようなので知られ
ていてもおかしいと言うわけでもないのだから視線が集まるのも
自然なことなのでそれをおかしいとは感じないが、自分は一般人
なので視線が集まるのはおかしいと考えたところで視線が集まっ
た理由に気が付いた。
(私が一般人だからか)
 服こそケルトから借りたものだが言ってしまえば神巫は一般人
であり、その一般人が王族と共にいる。目立たないわけがないの
だと考えると、ボリスに視線が集まっていたのにも納得がいく。
 彼の場合はもしかしたら髪の色が目立っていたのかもしれない
が…………。
 そんなことを考えながら気になった服の場所まで来ると足を止
めた。
 欲しいと考えていたコートはさすがにそこにはないが、今は
コートの下に着る服を探しているのでそれはそれで構わなかった。
「別の世界と言っても服のデザインはそれほど奇抜と言うわけで
もないのだな。」
 なんとなく安心してそう呟くと服に手を掛けた。
 どうやらケルトから借りた−ケルト曰く貰った−服は王族のも
の故らしいと分かった。
 今回のように服を選ぶさいはどうしても自分にとって懐かしい
もの、つまりは故郷である世界にと言うべき場所にあったものに
似たものを探してしまう。
 勿論なくてもしっくり来るものにしないと変になるのはよく
しっているので選ぶのは必然的に慎重になるのだが、元々それほ
ど派手な服を好んではいないと言うこともあり、手にとるものも
柄のほとんど入っていないものになっている。
「さして服にこだわりがあるというわけでもなし、どうするか」
 この辺りの服が気になったのは事実だがその中から更に選ぶと
なるとなかなかに迷うものらしい、と考えながら結局蒼い襟口の
広い袖が肩までの無地の服を選びとった。
 さすがに長袖を3枚は暑いと考えたのだ。
 とはいえ、下の服は長袖にしなくてはいけないだろうし、コー
トは否応なくも長袖だ。半袖はさすがにおかしいし、たぶん短い
といろいろ不便だとも思うし、防御面で生身の体をさらしている
わけにもいかない。いくらなんでも刀を持つ腕を傷つけるわけに
はいかない。
 ケルトにばれたら何を言われるかわかったものではないなと思
いながら、明確に想像できてしまったその状況や言葉に軽くため
息をついた。このままだと確実に自分が記憶を探すために出ると
いったらついてきそうだなと、確実にそうなるだろうと思って心
の中だけで軽く落ち込んだ。
「まぁ、そのときは気づかれぬように出てゆけばよいことだな」
 そういうと持っていた服に合わせる上に着るやや薄めのロング
コートに似た服を選び取った。
 その服を選ぶと最後にコートを選ぼうと思いここにはないこと
を確認していたので別の場所に移動することにしたのだった。

  
























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