領主の心
 
 
 
 一方、ロドルフォを抱えたカイトスは一体自分は何をしている
んだと、少々落ち込み気味に思いながら今抱えている、落ち込む
原因となっている人物の部屋へと向かったのだった。
 そして部屋についてすぐにロドルフォをソファの上に降ろした
のだった。
「全く、今回の理由は一体なんですか?」
 ソファに下ろしたロドルフォに溜息交じりに尋ねた。これが始
めてではない所為で完全に慣れてしまっていた。嫌な慣れ方をし
たものである。
 そうやって相手が話し出すのを黙って待っていると、ぽつぽつ
と話し出した。
「……ポーラスで、また、あの(・・)被害が出たと聞いて……それで……。」
「黙っていることも、傍観者でいることもできなくなったのですね?」
 手が白くなるほどに握り締め話すロドルフォを見てカイトスは
ただ、この人らしいとだけ思った。こういう人だからこそ、人徳
というものがあるのかもしれなかった。
 自国の民を慈しむだけならある程度できた人間なら誰でもでき
る。だが彼の場合は自国の民を慈しむだけではなく、他国の民の
ことを思いやり案ずることができるほどに広く深い心の持ち主な
のだ。最も本人に自覚というものはかけらもなく、当然だと思っ
ているのがちょっと難点なのだが……。
「ですが、ロドル……いえ、兄上(・・)。今のそのお体でアルファルド
にいかれてはあちらの方々に心配させてしまいますし、このよう
な怪我を負っている人間を使者に出すような国なのかと思われて
は民が哀れです。何よりも兄上は国の代表。代表が国にいなくて
は民が不安がります。それでなくともお体のことは領民も知ると
ころであり、最も心を砕いていることなのです。大切にしていた
だかなくては。」
 懇々と諭すように言うカイトスの言葉にロドルフォも申し訳な
くなってきたのか、いや、最初から申し訳なく思いながら行動し
ているのだから厳密には、申し訳ないという思いが強くなってき
ているのであろう。まるで捨てられた子犬のようになっている。
 カイトスもそんなロドルフォに微苦笑を浮かべるとそっと手を
取った。
「何より、この手の力を使いつづけた影響で傷の治りも遅れている
のですよ。皆、特のこの館に仕える者たちはそのことをよく知っ
ている分なおのこと心配しているのです。」
 手を取る際にしゃがんだので、下から見上げるようにそう優し
く言うと、ロドルフォは今にも泣きそうな表情をしていた。領民を
心配させていることが情けないと思っているのだろう。責任感の強
い人だから。
 今にも泣きそうな相手にカイトスは今度こそはっきりと苦笑する
と、そっと立ち上がり方に手を置いて「お休みください。」という
とベットに行くようそれとなく促した。
 ロドルフォはそれに頷くとゆっくりとベットに向かった。こうい
う場合は従うべきと思っているらしい。どちらが上かもわからな
い。そう思いながらカイトスは彼がベットに入るところを見守って
からゆっくりとソファに腰を降ろした。ちゃんと寝るまで見守る……。いや、見張るのも彼の勤めだ。多少、虚しいものがなくもないが。

  
























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